大判例

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東京高等裁判所 昭和60年(ツ)53号 判決

上告人 前田和男

被上告人 介川義孝

〔抄 録〕

二 原審は、以上の事実関係に基づき本件一一一の土地と本件一〇八の土地の境界及び右各土地の範囲は、石橋、生津が作成した地積測量図を基本として確定されるべきであり、秋元作成の測量図は的確な資料ではないから、ブロック塀設置時点に被上告人と上告人との間でされた本件一一一の土地と本件一〇八の土地の所有土地の範囲を定める旨の合意は、その線を真実の境界線と誤解していたものであり、土地の境界につきかかる誤解に基づきされた所有土地の範囲に関する合意は、要素に錯誤があるものとして無効である、と判示している。

三 しかしながら、土地の境界を合意し又は土地の境界を基準として所有土地の範囲を合意した場合においても、右の合意は所有土地の範囲のみを定めるものであって、境界自体を設定変更する効力はないのであるから、後の裁判で境界線が別に確定されることはありうるけれども、この場合、後の境界確定により右の合意が当然に影響を受けるものと解するのは相当ではない。

右のような合意においては、それが和解契約でない場合でも、当事者は、特段の事情のない限り、後に客観的境界自体が何らかの経過で判明したときに合意が覆えされるとは予定せず、ただ現地について自己の所有権の範囲を画し、これを確定する目的であるとするのが当事者の意思に合致すると考えられる。したがって、所有土地の範囲についての合意に要素の錯誤があるというには、単に結果的に境界線につき誤解があったという一事では足りず、所有土地の範囲が客観的境界線のみに依拠して定められ、すなわち境界線が後日別に確定したときは所有土地の範囲にも変動を及ぼすことが合意の内容とされているなど特段の事由の存在が必要というべきである。

これを本件についてみるに、前記のとおり、被上告人と上告人は合意のうえブロック塀まで設置しているのであるから、前記の事実関係から、直ちに所有土地の範囲の合意に要素の錯誤があるとした原判決には、当事者の意思の解釈及び錯誤の成否につき審理不尽、理由不備の違法がある<。>

(小堀 時岡 宇佐見)

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